10月1日にショーを開催したジョナサン・アンダーソンによるロエベ(LOEWE)の2022年春夏コレクション。床一面にホワイトウッドが敷かれた会場は、小道具も装飾もなく、作品を引き立てるギャラリーのような空間だ。
今シーズン、熱心な芸術愛好家でも知られるアンダーソンがインスピレーションを得たのは、イタリアの画家、ヤコポ・ダ・ポントルモ。ルネサンスの様式を打破し、絵画において主観主義の傾向を強めた「マニエリスム」を代表する人物だ。
アンダーソンは、ドレープとシルエット作りの古典的な概念から自らを解放し、実験的な取り組みを行ったようだ。異常なまでに歪められたプロポーション、コントラストの強い配色、躍動感のあるドレープ、そして目がくらむような非現実的な色彩など、ポントルモの1528年の代表作「十字架降下」の世界観がランウェイを彩った。彼は、悲嘆と希望が混在する同作品の「ヒステリー」に共鳴したという。
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オープニングを飾ったのは、3つのミニマルなブラックドレス。見えない糸で引っ張られているかのように歪んだシルエットが目を奪う。その後も、儚げなパステルをはじめ暖色や寒色など、ポントルモ特有の色の妙が見事に再現されている。
ジャージーTシャツ素材にゴールドプレートをドッキングさせたり、ケープのショルダー部分に翼のような構造を取り入れたり、さらに白のタンクトップにシフォンのバルーンパンツを合わたり、オブジェのようなピースが数多く登場。日常の中で「着飾る」感覚を取り入れてほしいというアンダーソンの思いを感じ取ることができる。
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さらに話題を集めたのが、潰れた卵をヒールに再現したサンダルだ。他にも、キャンドルやマニキュア、石鹸、バラを模したヒールも見られた。オリジナリティを生み出すことが難しいとされる現在のファッション界において、アンダーソンは実験的な試みを行うことで常に次のレベルを追求している。
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